December 19


 THE SANTA'S PRESENT for WINTER HOLIDAYS : Great Plains

 とうとう一枚も届かなくなったクリスマスカードに、改めて自分の年齢を思い知らされる。
 妻と主だった友人達は天の国へと旅立ち、一人娘とは喧嘩別れしてもう十五年だ。
 人の名前を「ジョージ」と発音しやがった近所の連中と、今更なかよくツリーを囲む気にもなれんし、向こうにもその気はさらさらないだろう。
 もみの木を切り出す体力もなく、プレゼントを贈る相手もなく。夕飯は七面鳥でもプディングでもなく、昨日と同じシチューにパン。
 偏屈爺のクリスマスなんて、こんなもんだ。
 いつもと同じ夜がやってきて、いつもと同じ朝がやってくる。それでおしまい。何もなし。

 そのはずだったのに。

 なぜだ。なぜ俺の目の前に、赤い服の爺が立っている??

「やあ、ゲオルグ。約束通り、迎えに来たぞい」

 いやににこやかなその爺は、人のことをじろじろと見回して、うんうんと頷いた。

「立派な髭になったのう。しかしその顔はいただけない。笑顔を絶やさぬことが弟子になる条件だと、手紙に書いたはずじゃがのう?」

 手紙? 弟子? 何のことを言っている?
 いや待て、そう言えば子供の頃に、一度だけ――。

「まあ、よいわい。さあ、行くぞゲオルグ」

 行く? どこへ?

「ソリを外に待たせてある。さあ、世界中の子供たちに夢を届けに行くとしようぞ、わが弟子よ!」

 九頭立てのソリに乗り
 星降る空を駆け抜けて
 世界中の子供らへ
 夢と希望を贈る 白髭の聖者

 そうだ あの時 俺は願った
 孤児院にサンタは来ない
 だから自分がサンタになればいいのだと――
 
「ちなみに言っとくが、お前さんが一番の年下じゃ。兄弟子達の言うことを聞いて、しっかり励むんじゃぞ、若造」

 サンタクロースになれる日は、果てしなく遠そうだ。

Story by seeds



 DEAR SANTA第二弾の後半です。
 舞台はちょっと昔のアメリカ。ドイツからの移住者である彼は、自分の名前の発音にこだわりを持っているようです(^^ゞ
 本物のサンタが来ちゃったYO! というお話(笑)
 当初はこの後に、誰もいなくなった家に娘と孫が尋ねてくる、というエピローグを用意していましたが、蛇足になるので取っ払いました。


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