December 11


 もみのきを切り出してきたのは父さんで、飾りを買いに行ったのは僕と母さん。
 お財布と相談した結果、買えたのはトップスター一つだけだったけど、母さんは明るく笑って言った。
「家中のリボンを飾りつければ、立派なツリーになるわよ!」
 何より大切なのは、楽しむ気持ち。
 気持ち一つで、荒野も花園に、開拓地も楽園に変わるのよ。
「ねえロビン、約束しましょ」
 リボンを結びながら、歌うように母さんは言う。
「約束?」
「そう。これから毎年、一つずつツリーの飾りを増やしていくの。どう? 楽しいと思わない?」
 毎年違ったツリーが見られるのよ。なんて贅沢だこと!
 朗らかな声に、父さんも笑う。
「それはいい考えだ。このツリーこそが、我が家の歴史だな」

 トップには輝くガラスの星。
 古びたリボンで飾られただけの、小さなクリスマスツリー。
 だけどそこには、父さんがいて、母さんがいて、僕がいて。
 楽しい気持ちが、たくさん光ってる。

 やがて、このツリーが色とりどりの飾りで彩られる時。
 我が家にはきっと、たくさんの思い出が溢れていることだろう。

Story by seeds



 アメリカの西部開拓時代、一攫千金を夢見て移住してきた家族をイメージして書いたお話です。
 お母さんは楽天家、というお話(笑)
 一年に一つずつ、お気に入りのオーナメントを加えていって作り上げられたクリスマスツリーは、さぞ素敵なものになったことでしょう。


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