December 7

 
   Read a red cap story.
 
 
 これは、ある男の子 (おとこのこ) のおはなしです。
 その男の子 (おとこのこ) は、生 (う) まれてから一度 (いちど) も、サンタクロースにプレゼントをもらったことがありませんでした。
 
 プレゼントがほしかった男の子 (おとこのこ) は、いっしょうけんめい、よい子 (こ) になろうとがんばりました。
 しかし、その年 (とし) も、つぎの年 (とし) も、サンタクロースはプレゼントをもってきてくれませんでした。
 
 そして、男の子 (おとこのこ) が6さいになった、ある年 (とし) の、クリスマス ・ イヴの日 (ひ) のことです。
 男の子 (おとこのこ) は、がっこうのかえり道 (みち) 、まっ赤 (か) なぼうしをひろいました。
 
 男の子 (おとこのこ) はひろったぼうしをもちかえると、お父 (とう) さんとお母 (かあ) さんに見 (み) せます。
「お父 (とう) さん、お母 (かあ) さん、さっき、道 (みち) でこのぼうしをひろったよ」
 
「あら、あら。サンタクロースのぼうしみたいね」
 お母(かあ)さんはいいました。
 
「だれかのおとしものかもしれないな。あしたになったら、こうばんへもって行 (い) こう」
 お父 (とう) さんはいいました。
 
 
 やがて、夜 (よる) の8じになりました。
 こどもは、もう、ねるじかんです。
 
「ことしは、プレゼント、もらえるかなあ」
 
 男の子 (おとこのこ) は、そう思 (おも) いながら、ねむりにつきました。
 
* * * * *
 
 男の子が眠った後のこと。
 下の階のリビング ・ ルームでは、彼の両親が話し合っていました。
「どう? 今年は年末のボーナス、出そう?」
「ああ。でも、スズメの涙だよ」
 眉根に皺を寄せて、お父さんは答えました。
「そう ……」
 お母さんは、深刻な表情で頭を抱えます。
(お年賀、お年玉で、全部飛んじゃうかしら。来年は、タカシの入学式もあるのに ……)
 
 その時、ふと、お父さんの目に、あの赤い帽子が映りました。
 話を逸らす効果も期待して、お父さんは口を開きます。
「あの帽子、誰の落し物だろうな」
「さあ ……。大方、駅前のデパート辺りのサンタクロースが落としていったんでしょう」
 お母さんは、そっけなく受け応えしました。
「ちょっと、被ってみるか」
「やめなさいよ、誰が被ったか分からない帽子なんて」
 お母さんが止めるのも聞かず、お父さんは帽子を被って、後ろにあった鏡を見ました。
 
「…… 似合わないな」
「そうね」
「そういえばタカシ、クリスマスプレゼント、毎年楽しみにしていたよな」
「そうね」
「今年は、何が欲しいって言ってたっけ?」
「確か、 『ラジコンが欲しい』 って言ってたわよ。ヘリコプター型の ……」
「そうか」
 お父さんは帽子を脱ぎ、膝元へ置くと、静かに立ち上がりました。
 
「ちょっと、タバコ買いに行って来る」
 
* * * * *
 
 つぎの日 (ひ) の朝 (あさ) になりました。
 男の子 (おとこのこ) は目 (め) をさますと、まくらもとを見 (み) て、おどろきました。
 そこには、なんと、プレゼントのはこがおいてあったのです!
 
 男の子 (おとこのこ) は、とてもよろこんで、プレゼントのつつみを開 (あ) けました。
 プレゼントのなかみは、ずっと前 (まえ) からほしかった、ヘリコプターのラジコンでした。
「うわあ、すごいや!」
 
 ピカピカのラジコンをもって、男の子 (おとこのこ) は、かいだんをかけおります。
「お父 (とう) さん、お母 (かあ) さん、見 (み) てよ! サンタクロースが、プレゼントをもってきてくれたよ!」
 
 
 
 お父さんとお母さんは顔を見合わせて、こっそり微笑みました。
「タカシ、毎年いい子にしていたもんな。よかったな」
 
 

Story by 藤宮輝凛



 聞けば、世間ではサンタさんの来ないお宅も結構多いそうな。
 もちろん、各家庭、様々な事情があるのでしょうけど……。
 子供の楽しみを何より尊重してくれた両親に、改めて感謝です。


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